2012 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ社会国家におけるキリスト教系民間福祉についての歴史学的検討
Project/Area Number |
21520761
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中野 智世 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (90454470)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 社会福祉 / ドイツ / キリスト教 / 社会国家 / 民間福祉 / 社会史 / ケア |
Research Abstract |
本年度は、研究計画に掲げたテーマ1および2についての検討を進め、ドイツ社会国家と民間福祉との補完的役割を、制度的枠組みと実践の双方から明らかにした。また、キリスト教系民間福祉の中でも最大規模を誇るカトリック慈善事業についての研究サーベイを行うとともに、第二次世界大戦後の占領期におけるカトリック・カリタス連盟の人道支援、各種緊急援助についての史料収集・分析を行った。 さらに、同じく占領期における児童福祉についても史料収集、分析を行い、非常時における自治体行政と民間福祉との連携体制を明らかにした。具体的な研究成果は下記のとおりである。 1. ヨーロッパ福祉史の国際比較論集を編纂するとともに、ドイツ社会国家における民間福祉についての章を執筆した〔「福祉国家を支える民間ボランタリズム―20世紀初頭ドイツを例として」高田実・中野智世編『福祉(近代ヨーロッパの探究15)』ミネルヴァ書房〕。 2. 19世紀から20世紀初頭までのカトリック慈善事業の展開についての口頭発表を行った〔「近代ドイツにおけるカトリック慈善事業」ヨーロッパ近代とカトリシズム研究会:青山学院大学(2012年5月12日)〕。また、福祉職のルーツである、慈善に従事する修道女・ディアコニッセについてのコラムを執筆した(「修道女とディアコニッセ-ケアの職業のルーツを探る」『福祉(近代ヨーロッパの探究15)』所収)。 3.第二次世界大戦後の分断占領期における民間福祉団体の役割について、カリタス連盟を事例とした口頭発表を行ったほか〔「社会国家と民間非営利福祉団体」中部ドイツ史研究会:愛知学院大学(2012年12月1日)〕、児童福祉を事例とした論文〔「瓦礫の子どもたち・故郷を失った若者たち-占領下ドイツにおける児童・青少年保護」〕を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史資料の収集・分析については、おおむね当初の計画通りに進展している。テーマ2については、一昨年の史料調査の結果、三都市比較が困難であることが判明したため、一都市についての事例研究とした。 研究成果の発表については、単著の執筆を予定していたが、出版社との交渉の過程で内容の大幅な変更を余儀なくされたため、昨年度内の完成にはいたらなかった。また、論文集については、共同執筆者との足並みがそろわない、出版社の都合で脱稿した原稿がなかなか刊行にいたらないなどの理由で、なお若干の遅れが生じている。とはいえ、本研究期間終了までには解決すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究計画に沿って研究を進める予定であるが、テーマ3については、女子社会事業学校の史料状況が芳しくないため、今夏の史料調査結果に基づいて、別の形のアプローチを検討する予定である。
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Research Products
(7 results)