2011 Fiscal Year Annual Research Report
出土文字資料の出典論的方法による古代信仰展開様相の研究
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21520777
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
門田 誠一 佛教大学, 歴史学部, 教授 (00278467)
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Keywords | 墨書土器 / 中国古典 / 仏教 / 経書 / 奈良時代 / 平安時代 / 五方龍 / 陰陽道 |
Research Abstract |
奈良・平安時代の墨書・線刻遺物(土器・石製品など)として記されている語句と文章について、とく近年、当該文字資料が多数出土している中部・北陸地域を対象として、文献収集と資料および出土遺跡・遺構の実地調査を下記の通り行った。なお、本年度は研究費の支給が二次にわたったため、二次給付がない場合を想定し、地域的には当初どおりの調査を行えるように考慮した結果として、当初の計画を日程面で縮小した。それに伴い、主として二次給付分を用いて、中間年度に際して、出典論的検討の基礎的知見の獲得のために中国古典の知見を獲得しなおすべく、関係する基礎的書籍を購入し、精読するとともに、中国文献検索のためのデータベース(間接経費)に一定金額で契約し、中国古典に関する出典論的検討に資する中国研究者の文献・論文を精査・収集し、精読した。これらによって本研究の目途とする出典論の方向性を獲得することを目論んだ。これらによって得られた知見は本年度の成果論文に盛り込み、あわせて中国での最新の研究論文についても参照し、引用文献としてあげた。 [文献調査] 国立国会図書館等での文献調査・検索・複写 7月14~15日 中部・北陸地域の発掘調査報告書等複写 国立国会図書館・書道博物館等での文献調査・検索・複写 12月2~3日 中部・北陸地域の発掘調査報告書等複写および関係資料実見 [資料調査] 富山・石川県における実地(遺物実見等)調査 8月8~10日 富山県埋蔵文化財センターほか 長野県における実地(遺物実見等)調査 10月7~8日 松本市立考古博物館ほか 福井県における実地(遺物実見等)調査 11月11~12日 福井県立歴史博物館、大野市歴史博物館ほか これらの実地調査によって、中部・北陸地域出土の奈良・平安時代の遺跡から出土した宗教関文字資料についての基礎的な知見を得た。その後、文献資料検索・調査で得た資料によって、出土遺跡・遺構の事実認識と研究史の整理と把握を行った。とくに儒教的な典拠をもつ語句が記されている出土文字資料(墨書土器・木簡等)について、昨年度までに調査した他地域の古代文字資料との相互の比較検討と出典論的研究を経て、奈良時代の地方における中国古典の展開と認識について実態を明らかにした。あわせて、陰陽師などの中央政府からの専門官人の派遣以前に陰陽道に関係する中国古典や仏典に関する知識が一定程度存在したとを証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度までに実績を報告した既発表の成果のほかに、現状で草稿として2本分の論文(「古代仏教関係遺跡出土「酒」字墨書土器考」「土器に記された吉祥語にみる文化的背景」いずれも仮題)を準備している。本研究のエフォートは40%であるから、その他の研究も含めて年間3篇の論文を執筆すると仮定し、そのなかでのほぼ1篇が、本研究の成果論文とすると、残り2ヵ年の成果はすでに草稿として一応の形態を担保しており、このような点を根拠として当初の予想以上に進展しているとする区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の進展は順調に推移しており、今後も予定通りの調査および成果公表を行っていく。予想としては5ヵ年間の研究期間では最低5篇(現時点で3篇)の論文を研究成果として公表できると考える。今年度以降は現状で用意している予稿をもとに、さらに公表論文を増やすこととを目標とし、その後は本研究終了後、3、4年後を目処に、これらの論考を体系化し、論文集として、科学研究費研究成果公開促進費の出版助成を申請し、単行出版する予定である。
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Research Products
(1 results)