2009 Fiscal Year Annual Research Report
国際的都市間競争下におけるウィーン市の都市空間再編事業の新展開
Project/Area Number |
21520794
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川田 力 Okayama University, 大学院・教育学研究科, 准教授 (30263643)
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Keywords | ウィーン / 都市空間 / 都市地理学 / まちづくり / 都市間競争 / オーストリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、国際的な都市間競争の進展が都市空間再編事業の新展開にいかなる影響を与えるのかをウィーン市を事例として検討することにある。 本年度は、まず、ウィーン市の地域特性に関する統計データを地図化し、統計区毎の社会経済状況の地域的差異とその時系列的変化を概観した。その結果、ウィーン市の内部市区を取り囲む環状道路に外接する地区に、学歴、就業率、平均労働単価、外国人構成比、住宅の質でネガティブ評価される地区が環状に集積しており、都市問題が発生するポテンシャルが高いことが判明した。 この結果をもとに、事例調査地候補地区を抽出し、候補地区における調査の意義および実現可能性についてウィーン大学のH. Fassmann教授と意見交換を行い、事例調査候補地区の絞り込みを行った。さらに、準備段階で既に情報収集の進んでいる事例調査候補地区については、現地観察を行うとともに、調査協力者候補リストの作成を行い、現地調査実施に有効なプログラムを検討した。 また、ウィーン市における予備調査の結果、ウィーン市はEUの東方拡大により中央ヨーロッパの中心的な位置を獲得したことにより、都市成長戦略を取っており、上記の都市問題が発生するポテンシャルの高い地域の改善を、都市成長の中核地区の整備と結びつけた都市空間再編事業が展開していることも確認された。 一方、国際的な都市間競争の進展についてより広域的に検討する資料として、ベルリン市のドイツ都市学研究所において、中央ヨーロッパを中心とした近年の国際的な都市間競争の現状に関する文献収集を行った。本年度の研究の成果と意義は、以上の結果から、市内各地区の社会空間構造の地域的差異や、よりローカルな地方行政組織の対応の差異が国際的都市間競争を意識した都市空間再編事業の進行プロセスにいかなる影響を与えるのかをより詳細に分析する必要があることが判明したことにあるといえる。
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