2010 Fiscal Year Annual Research Report
国際的都市間競争下におけるウィーン市の都市空間再編事業の新展開
Project/Area Number |
21520794
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川田 力 岡山大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (30263643)
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Keywords | ウィーン / 都市空間 / 都市地理学 / まちづくり / 都市間競争 / オーストリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、国際的な都市間競争の進展が都市空間再編事業の新展開にいかなる影響を与えるのかをウィーン市を事例として検討することにある。 本年度は、昨年度の研究成果をふまえ、まず、ウィーン市都市開発局において、都市空間再編事業に関するマスタープランの策定過程、事業実施時の地域特性への対応、事業評価プログラムについての聞き取り調査を実施した。その結果、事業実施の財政的背景となるEUからの補助金受給要件が対象地域選定に影響することなどが確認された。 また、ウィーン市における事例調査地区で事業の進捗状況の現地観察調査および、地区行政担当者、コミュニティー組織、住民代表に聞き取り調査を実施した。その結果、事業が計画通り進行している地区では、行政担当者と地域コミュニティー・住民をつなぐ中間組織が効果的に機能していることが判明した。一方、工業機能から居住機能への都市機能の大幅な変更を計画した事業では、事業主体と行政担当者の意向が事業実施全般にわたり極めて大きな影響力を持つが、近年は計画地域周辺住民の合意形成にあたって、数年にわたる事前プログラムを実施するなど周到な準備が進められていることも確認された。 本年度の研究の成果と意義は、以上の結果から、国際的都市間競争を意識した都市空間再編事業の進行プロセスには、市内各地区の社会空間構造の地域的差異をふまえた、よりローカルな対応を伴っていることが判明したことにあるといえる。また、都市空間再編事業の影響は、短期的なものと中長期的なものがあり、行政が実施している事業の事後評価プログラムで十分に補足できない事象が少なくないため、都市地理学等からの学術的貢献が期待されていることも明らかとなった。
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