2011 Fiscal Year Annual Research Report
国際的都市間競争下におけるウィーン市の都市空間再編事業の新展開
Project/Area Number |
21520794
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川田 力 岡山大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (30263643)
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Keywords | ウィーン / 都市 / 都市地理学 / まちづくり / 都市間競争 / オーストリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、国際的な都市間競争の進展が都市空間再編事業の新展開にいかなる影響を与えるのかをウィーン市を事例として検討することにある。 本年度は、昨年度までの研究成果をふまえ、まず、ウィーン市都市開発局において、都市空間再編事業に関する実施済事業の事後評価について、および、近年の経済状況の変化が事業実施に及ぼした影響についての補足調査を実施した。 その結果、事後評価については事業時に設置した交流施設における地域イベントや集会時に住民意見の聴取を行なっていること、再開発地域の地域事務所における住民サービスが重要な役割を果たしていることが判明した。また、近年の経済状況の変化が、ウィーン市では人口増と事業への補助金に影響していることなどが確認された。 また、ウィーン市における事例調査地区での追加調査においては、調査期間に計画されていた都市空間再編事業は順調に進捗しており、景観の変容が顕著に認められること、および、各事業の進捗状況に応じて、コミュニティー組織の強化のための諸活動が活発に実施されていることが確認された。その際、いずれの地域においても多文化共生の視点が重要な役割を果たしていることも判明した。 本年度の研究の成果と意義は、以上の結果から、都市空間再編事業により変容したコミュニティー組織および新たに形成されたコミュニティー組織の強化のための事業が継続的に実施されていることが再確認されたことにある。これは、ウィーン市が既成市街地内部の急激な地域変化を避けるため、事業期間を比較的長くとる再開発事業を進めていることと相まって、国際的都市間競争の中で、多文化共生の都市づくりを進めることにより、近隣諸国からの流入人口の増加に寄与しているものと評価できる。
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