Research Abstract |
本研究課題の3年目にあたる平成23年度は,中心対象都市タラゴナの比較事例をなす近隣の商業都市,レウスに関する調査・分析を集中的に進めた.そのために,9月に3週間余りの日程で現地調査を実施した. 現地調査では,市都市計画策定の中心人物(都市計画担当の前助役,新マスタープラン委員長,市都市計画課責任者)に対して詳細なインタビュー調査を行い,歴史地区再生の鍵となった衰退エリアの再開発や現在起草中の新マスタープランの基本構想に関する良質の生情報を得た.併せて,大縮尺のデジタル版都市計画図をはじめとする資料提供を受けた.また商業事業者については,歴史地区の商業活性化に大きな役割を果たしているレウス商業者組合,中心部限定の商業活性化推進団体,市観光・商業協会の代表者へのインタビュー調査を実施し,郊外型ショッピングセンター台頭を前にした商業者の戦略を把握した.文献調査の面では,ルビラ・イ・ビリジリ大学やタラゴナ県図書館を拠点とする文献蒐集に加えて,地元新聞からの系統的な情報蒐集に関して,タラゴナ市図書館・文書館から全面的サポートを受けた.これらの調査を通じて,個性的な小規模店舗が展開する歴史地区を核として,求心的な空間構造を維持しているレウスの実態が浮かび上がり,迫力ある遺産都市の建造環境を有しつつも,広域拡散的な市街化を経験したタラゴナとの対照性が明らかになった.なお,タラゴナでは,遺産保護をめぐる紛争当事者へのインタビューを行い,前年度に実施した現地調査を補完した. 平成23年度の研究成果については,一橋大学地中海研究会刊行の学術雑誌Mediterranena Worldにレウスに関する調査・分析の結果を公表するとともに,2回の学会・研究会で報告した.また,本研究課題に関連する成果として,地中海都市の公共空間に関する論文1編を上梓し,市民向けの啓蒙記事の連載を始めた.
|