2011 Fiscal Year Annual Research Report
東亜同文書院生の「大旅行」記録による20世紀前半期満州の地域構造研究
Project/Area Number |
21520804
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
藤田 佳久 愛知大学, 文学部, 名誉教授 (70068823)
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Keywords | 東亜同文書院 / 大調査旅行 / 満州地誌 / 満州地域構造 / 満州 / 満州調査報告書 / 1920年代満州 |
Research Abstract |
20世紀のうち、満州事変以前の満州の地域構造について、1901年上海に設立された東亜同文書院の書院生による満州地域の調査旅行日誌と調査報告をベースにして解明することにその目的がある。本年はさらにそれらの記録を解読しつつ、最終年度のまとめを次のように行った。 (1)清朝末期には、漢民族の流入も限定的で、森林や草地など生態系が温存されていた。そのような中でロシアによる東支鉄道の開通がハルピンなどの核を中心に北満の開発を先行させた。(2)日露戦争に日本が勝利すると、南満州鉄道沿いの開発がすすみ、北満の小麦や大豆などの商品化が可能になり、沿線の交通要地や河川との交点に中心都市が誕生して、局地的経済圏が成立するようになり、日本人も進出した。(3)その後の辛亥革命によって清朝が倒れ、民国政府が誕生すると、規制が弱まり、漢民族の本格的流入が始まり、満人を排除する形で農地開墾がすすみ、中心都市には漢民族、そして日本人の商人が流入して鉄道沿線の中心地を発展させた。(4)また民国政府は新たな行政単位を設定するが、濃淡の差がみられ、交通条件の良否により新たな県の間の格差が浮上した。そこに浮上した弱体県は未墾地が多く、のちに日本からの移民が流入する地域にもなった。(5)満州事変と満州国の成立は、満州地域に新たな鉱工業と鉄道ネットの発達をもたらし、それまでの緩やかな一元的地域構造が多元的地域構造へと変化をもたらすことになるが、この時期以降については次の課題としたい。 <意義>満州を広く歩いて記録したデータは他になく、これを利用することにより満州地域の原初的状況とその変化過程の始まりを解明できる。 <重要性>戦前の満州地域は懐古的な記録とそれをベースにまとめた出版物は多いが、広く現地をふまえたデータによる研究は少なく、そこにこの研究の新たな試みの価値がある。
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