2009 Fiscal Year Annual Research Report
近年の中山間地域の土地利用とイノシシの行動特性の関係-被害対策と共存にむけて-
Project/Area Number |
21520808
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
高橋 春成 Nara University, 文学部, 教授 (70144798)
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Keywords | イノシシ問題 / GPSテレメトリー / 共存モデル |
Research Abstract |
調査地域は、滋賀県大津市の栗原地区周辺である。当地は、滋賀県の比良山地山麓部の丘陵地帯に位置し、戸数80ほどの集村形態の村である。集落の周りに水田が拡がり、一部に畑地がみられる。畑地は団地になっている箇所もあり、そこではゴボウなどの特産物の生産もみられる。水田や畑地は、山地部から引水した用水路による灌漑を行っている。水田や畑地には耕作放棄地が混在し、それらが拡大している。また集落や田畑の周遊には、放置された竹林も多い。当地の丘陵は小河川による開析を受けていて、狭いが比較的深い谷が刻まれており、そのような河川が集落の中を通っている。 平成21年度は、6月から8月にかけて2頭のイノシシにGPSを装着した。また、イノシシの行動や被害に関する聞き取り調査や実態調査を行った。その結果、深く刻まれた谷と河川部、耕作放棄地・放置竹林、放置された用水路などが、イノシシの移動経路・餌場・潜伏地として特に重要な存在になっていることが指摘できた。 当地の被害防止は、電気柵による防護柵の設置が多い。土地がまとまっているところではグループによる電気柵の設置がみられるが、そうでないところは個人の設置となっている。特に、上述した谷と河川部沿い、耕作放棄地・放置竹林、放置された用水路などの近隣の田畑は被害を受けやすい状況にあるため、その点に対する住民意識を高める必要がある。 団地になっている畑地のひとつは、大規模なワイヤーメッシュ柵を助成金により設置している。現在の柵は、7・8年前の柵が古くなり破損したため取り替えたものである。この柵の近くにも谷と河川部があり、そこからのイノシシの接近や侵入が認められる。恒久的な柵でも、周囲にイノシシの接近を促す環境があれば、耐用年度や管理の不行き届きなどからイノシシの侵入を受けることになる。
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