2009 Fiscal Year Annual Research Report
バリ・ヒンドゥー教徒の共同体における慣習の再解釈に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
21520812
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中村 潔 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 教授 (60217841)
|
Keywords | 慣習村 / 伝統 / 知識人 / バリ・ヒンドゥー教徒 |
Research Abstract |
本研究は、村の「伝統的」知識人や識字能力によって社会的地位を上げた比較的若い近代的知識人など、さまざまな位置の人々による、ローカルな場面での「伝統」の語られ方やその操作のしかたを、慣習村の規則、とりわけ儀礼遂行に関わる規則の変容を対象として調べようとするものである。 インドネシア社会や「伝統の創造」に関連する文献を検討の上、地方紙の収集と予備的な現地調査を行なった。まず、ウダヤナ大学の調査パートナーと連絡をとり調査許可申請の準備を始めた。また、現代的な知識人として村の出身の大学教員(国立ウダヤナ大学の一部が独立法人化した応用科学教育大学)に事前に連絡を取り、聞き取り調査を行った。 調査対象の慣習村を含む地域でこの大学教員が始めた村興しのプロジェクト(土地の農産物を用いた菓子の生産販売)に参加した。その際、これまでも親交のあった慣習村役職者や、近年慣習村に関心を示しだした新興のアントレプレナーや、教員や役人などを対象にオープンエンドのインタヴューをした。 さらに、慣習村の近代的な指導者層のかなり部分が参加する慣習村大会議に参加し、伝統的組織の成員構成の変化や儀礼遂行に関わる規則の変更が現在どのように行なわれつつあるのかを調べた。 初年度の調査で、「伝統的」知識人と「近代的」知識人がどちらも「古来変わらぬ伝統」を志向しているにもかかわらず、伝統儀礼への参加のあり方やとらえ方に大きな差のあることが分かった。こうした具体的事例から得られた資料をもとに、平成22年度は村の指導者たちの位置付けや彼らの間の関係の把握を視野に入れ、指導者層(伝統的指導者や近代的知識人層)に対し、より踏み込んだインタヴューを行なう。
|