2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520813
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
金沢 謙太郎 信州大学, 全学教育機構, 准教授 (70340924)
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Keywords | 生態・環境 / 遊動民 / 狩猟採集 / 生活戦略 / 熱帯雨林 |
Research Abstract |
今年度は、マレーシア、サラワク州のバラム河支流のタハー(Taha)川沿いでのフィールドワークを行った。聞きとり調査を行ったのは、簡易に作られた小屋群に一時的に滞在していた9家族、35人のプナン人である。森の中にも多数の仲間が暮らし、小屋群と往来しているという。1980年ごろ、この地に木材企業のリンブナンヒジャウ社が林道を建設した。周辺の森林は次々に伐採された。と同時に、プナン人たちと企業、政府、NGOなど外部アクターとの接触が増えている。あるいは増えざるをえない状況に置かれている。 従来、プナン人の居住形態は、遊動型(Nomadic)か定住型(Settled)か、あるいはその中間の半遊動型(Semi-Nomadic)と分類されてきた。基本的に、同一集団の成員は同じ居住形態(場所)で生活していると考えられてきた。しかし今日、遊動型の同一集団が全員で移動してしまうと、外部アクターと接触をはかることはむずかしい。一方で、主食のサゴ・デンプンの確保は欠かせない。ちなみに、彼らは商業伐採後の森林内にあっても、サゴヤシの生育状況を熟知している。このような状況下で、タハー川沿いのプナン人は滞在小屋と往来しながら遊動生活の基盤を維持しているとみることができる。 研究成果の一部は、2012年2月末に昭和堂から『熱帯雨林のポリティカル・エコロジー-先住民・資源・グローバリゼーション』として刊行した。特に、同書の第2章タイトルは「狩猟採集民の生活戦略」である。同書はポリティカル・エコロジー論を本格的に論じた、国内で初めての図書である。今後、地域における人間の資源利用の変化をポリティカル・エコロジー論の観点から分析する研究成果が増えていくことが期待される。
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Research Products
(4 results)