2009 Fiscal Year Annual Research Report
ネオリベラリズムの時代の資源管理と共同体-フィリピンの海域資源管理の事例から
Project/Area Number |
21520820
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関 恒樹 Hiroshima University, 大学院・国際協力研究科, 助教 (30346530)
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Keywords | フィリピン / パラワン / 海域資源管理 / 共同体 / 市民社会 / 統治性 |
Research Abstract |
初年度である本年度は、資源利用に関する諸政策とそれに基づく村落統治、特に沿岸漁村の資源利用形態の諸局面に作用する権力関係とその動態などこれらのテーマを考察する上で有効になる理論的枠組み構築の作業を行った。特に今日の資源人類学、人文地理学、ポリティカル・エコロジーなど諸分野の近年の知見をフォローアップすることに努めた。 同時に、フィリピン中西部に位置するパラワー州にて2週間ほどの現地調査を行い、予備的資料の収集を試みた。特に、パラワン州南部ナラ町の一沿岸村落に滞在し、現在進行中の資源管理の実践と、それがコミュニティに及ぼす影響などに関して、住民、地方政府役人、漁業庁スタッフなどにインタビューを行った。調査地村落にて顕著に観察されるのは、従来の漁村共同体が、様々な資源のグローバルなネットワークを利用しつつ、生業様式の転換、再編を行う諸実践である。例えば、ハタ科の高級食用種の活魚行商ネットワークは、台湾、香港、中国本土を中心としたグローバルな市場を利用した行われる。また近年パラワン州沿岸村落に盛んに導入されている海草養殖などもこのようなグローバルネットワークを利用した生業パターンの転換の一例である。このように、今日の沿岸部村落共同体は、グローバルな資源のネットワークを利用しつつ、地方政府、国家、市民社会などの諸アクターとの関係性を再編しつつ、資源管理レジームの統治性が要請する村落の資源利用形態の転換に対応していることが考えられる。一方、従来オープンアクセスであった海面を囲い込み、一部の投資家による養殖場の拡大も、現在顕著に進展する傾向である。 来年度以降は、これら予備的調査における知見をさらに深め、資源管理のエスノグラフィーのより集約的調査研究を行う予定である。
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Research Products
(3 results)