2011 Fiscal Year Annual Research Report
先史土器復興を中心とするブラジル・アマゾン先史文化の現代的利用の人類学的研究
Project/Area Number |
21520822
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古谷 嘉章 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (50183934)
|
Keywords | ブラジル / アマゾン / 先史文化 / マラジョアーラ文化 / 土器 / 遺跡 / 地域的アイデンティティ / 物質性 |
Research Abstract |
1.ブラジル・アマゾンにおけるフィールドワーク(3/9~3/18):(1)パラ州ベレンにおいて複製先史土器の生産および流通の現況について実態調査を行い、その結果、従来からの構造的問題が継続している一方で、新しい商品開発や販路開拓が進行中であることが判明し、今後、ワールドカップやオリンピックの開催による観光客の増加によって需要が大きく伸びることが期待されていることがわかった。(2)マラジョー博物館の設立の経緯を対象としたドキュメンタリー(O Ajuntador de Cacos)の制作者にインタヴューし、その制作過程について詳細なデータを得ることができた。このドキュメンタリーには、多くの関係者の貴重な証言が収録されているが、そこで利用されているものが現存する映像録音資料のごく一部であることから、今後、それらのデータを資料として「マラジョー島における先史文化の現代的利用」についての詳細なモノグラフを作成する可能性が開かれた。 2.連邦マラニョン大学(マラニョン州サンルイス)人類学部において「A Ceramicana Amazonia : Entre Arqueologia e Globalizacao」(アマゾンにおける陶器:考古学とグローバリゼーションの間で)と題する研究講演を行い、ベレン、マラジョー、サンタレン等における実態調査の成果について、中間報告を行った。そこで人類学者たちと専門的なディスカッションを行い、ブラジル各地の共通状況とならんでアマゾン地方ならではの特殊性について理解を深めることができた。 3.州立サンパウロ大学(UNESP)においてフォークロア研究者と民芸品生産および民衆文化振興の実態について意見交換を行い、ブラジル全国で進行中の文化政策について包括的な知見を得た。 4.文化遺産をめぐる考古学、観光、行政の関係についての文献研究によって、世界各地の現況について認識を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ブラジル・アマゾンを舞台とする先史土器復興およびそれをとりまく社会状況について、当初の予定通り、各地で実態調査を行い、現況について詳細かつ厚みのある資料を入手することができている。それに加えて、現地研究者たちと緊密に意見交換を行い、中間報告会を開催するなど、現地への還元にも努めており、バランスのとれたかたちで研究が進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度には、ブラジル・アマゾン各地での博物館や資料館における「先史文化の現代的利用」の実態について調査を行うことを計画している。それと同時に、過去3年間の実態調査の成果について、サンパウロおよびブラジリアにおいて研究報告を行い、現地の専門家たちの批判をあおぐことによって、最終報告書作成に向けて、研究を完成させていくことを予定している。
|