2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530005
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
水林 彪 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70009843)
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Keywords | 法学 / 基礎法学 / 天皇制 / 市民社会 / 民法 / 憲法 / フランス / 人権宣言 |
Research Abstract |
私は、2010年度の「研究実施計画」として、次のように記した。 「今年度は、上記(2)の研究に力を注ぐ。具体的には、(1)「日本近代法の特質-<臣民=私民の法>または<不全の市民法>-」(仮題)論文の執筆に取り組むとともに、(2)日仏近代の全法体系(公法=天皇制・君主制のみならず、民法をも含む全法体系)の比較研究に着手する」。 (1)について。同名の論文を執筆した(ただし、出版社の編集の遅れにより、まだ刊行されていない)。論文の目次は次の通りである。「1.課題設定、2.フランス近代法-<市民法>、3.日本近代法-<臣民=私民の法>または<不全の市民法>、4現代日本法-不全の市民法の持続、5.<近代主義>の継承の課題」。目次から推測されるように、この論文は、フランス近代法(市民の法)との対比において、近代天皇制下の日本近代法は、市民の法が不全であったことを、民法典起草者の穂積陳重と、憲法学者の穂積八束の法思想を中心に、解明したものである。 以上のうち、天皇制的法体系の対極にあるものとして理解されるフランス近代法の原初の姿を、次に述べる研究において、遂行した。 (2)について。「近代民法の原初的構想-1791年フランス憲法律に見えるCode de lois civilesについて-」(『民法研究』第7号、信山社)を発表した。目次は次の通り。「1.1791年民法典構想の復元、2.全社会関係を規律する根本法-1791年民法典構想の特質(I)-、3.人権の法と秩序の法droit priveとdroit public-1791年民法典構想の特質(II)-、4.人格の法と財産の法:近代インスティトゥティオネスの原型-1791年民法典構想の特質(III)-、5.フランス近代法史における1791年民法典構想の位置、結び-広中俊雄氏の民法体系論に寄せて-」。これによって、近代民法の本来の構想は、今日の民法典像からはかなりかけ離れた、人権を中心に構想されたもの(今日の憲法にあたるもの)であったことが解明されたと思う。
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Research Products
(1 results)