2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530005
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
水林 彪 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70009843)
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Keywords | 基礎法学 / 法制史 |
Research Abstract |
1.古代天皇制研究:「天智・藤原王朝の挫折と再建」と題する原稿を執筆した(掲載誌は未定)。この論文は、通説とは反対に、8世紀初頭に成立する律令天皇制は天武系王朝ではなく、天智・藤原王朝であったことを論じた私の研究(「律令天皇制における皇統観念と神話-正統(記)と異端(紀)-」上・下、『思想』966号・967号、2004年所収など)を前提として、この天智・藤原王朝の挫折およびその再建過程(8世紀中葉~10世紀初頭)の詳細を論じたものである。このように記すと、本研究政治史的研究のように受け取られるかもしれないが、真実はそうではない。本研究は、激動の王朝政治史のあり方を、『古事記』(712年)に体系化されたところの、律令天皇制の国制理念が強く規制し続けていたことを論証したという意味において、法制史の論文にほかならない。方法と歴史過程の解釈の双方において、新しい考え方を提起しえたと思う。 2.近代天皇制研究:本年度の「研究実施計画」において記したように、近代天皇制研究の不可欠の前提をなすところの、近代天皇制国家の建設において意識的に否定の対象となったフランス型の近代的国制の全体構造の認識のための研究、具体的には、『憲法と民法の原初形態-近代「市民社会」の法史学』仮題)の執筆に力をさいた。原稿の80%程度は完成したが、それらを全体として統合する仕事が残された。近日中に完成させたい。 3.以上の諸研究を基礎として、現在の私の考えを端的に要約する性格の論文「近代法的理念とその日本的変容」を執筆する機会を得た。これは、(1)フランス革命期の憲法・民法を素材として、西欧近代法の理念を論じ、(2)それが、日本の近代天皇制国家の法体制において、どのように変容したのか、(3)さらには、特殊日本的近代法の特質が現代日本の法体制のうちにどのように刻印されているのか、などについて論じたものである。
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Research Products
(4 results)