2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530006
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上石 圭一 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80313485)
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Keywords | 法曹人口論 / 法化社会 / 司法制度改革 / 司法試験改革 / 日弁連 |
Research Abstract |
22年度は、主として文献調査をもとに、これまで法曹人口をめぐる議論が、どのように展開されてきたかを確認することから始めた。その際、とりわけ、1990年頃に盛んだった司法試験改革をめぐる議論と今世紀に入ってから行われた司法制度改革の二つを中心に取り上げ、その当時の政治・社会状況との関連の確認・検討を中心とした。 1990年頃の司法試験改革の際には、ちょうどバブル経済の時期にあたり、世界的には、規制緩和の傾向が見られたものの、まだ「事前規制から事後規制へ」という流れにはなっていなかった。「2割司法」と言われながらも、司法試験改革において合格者増員論への反対として主に聞かれた意見が、「弁護士人口を大幅増員させると、その経済基盤を崩し、人権擁護活動ができなくなる」というものであったことにも、それは現れている。 これに対し、司法制度改革は、バブル経済崩壊後に、経済立て直しの一環として、規制緩和の重要性が喧伝された。それと歩調を合わせるように、この時期、社会経済思想的には、ネオリベラリズムの影響が強くなっていたと思われる。経団連の外郭団体をはじめとする様々の団体が、司法制度改革のあり方について提言を発表しているが、それらに共通していたのは、規制を可能な限り撤廃し、市場での自由競争に委ねることであった。準法曹と法曹との垣根を限りなく低くする提案などは、こうした動きの一つとして位置づけることができる。 このように、経済思想との関連で見るならば、近年の法曹増員に対する批判は、既に弁護士になっている者が経済的に困窮したというのではなく,むしろ、行き過ぎた規制緩和に対する揺り戻しの流れの一つとして位置づける方が適切であると考えられる。
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