2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530008
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 三記 Nagoya University, 法学研究科, 教授 (60176146)
|
Keywords | 法制史 / フランス革命 / 人権宣言 |
Research Abstract |
本研究の目的は、法的文書の「世界遺産」と呼びうるフランス革命の1789年人権宣言にフランス法制史の立場から光を当てて、従来の狭く憲法学の観点からのみ捉える見方とは異なる読みもあることを示そうとするものである。研究の初年度である平成21年度には、1789年の人権宣言の文書がフランス最初の成文憲法である1791年憲法の冒頭に置かれた際に語句の変化を伴っていたことを実証的に明らかにすることを、1789年に印刷された人権宣言と1791年に地方で印刷された91年憲法の貴重な一次史料を入手ることで逹成した。すなわち、所有の不可侵神聖性を定めた第17条の「所有」が89年段階は複数形であり、91年段階に単数形に変化したことが、この一次史料および革命期のポスターで確証できたのである。そうすると、91年に出されたオランプ・ド・グージュの「女性および女性市民の権利宣言」も第17条の「所有」が複数形で書かれていることが問題の俎上にのぼってこよう。また、フランスの国立文書館での調査により、1789年8月26日に議会で可決された人権宣言を国王ルイ16世の裁可を仰ぐために提出された手書のマニュスクリプト段階では16条が最後になる可能性があることも判明した。これは、これまでの研究では言及されてこな「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は憲法をもたない」との条文が末尾を飾るのが法的文書として整っていると当時の人びとも考えていたのである。
|