2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530008
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 三記 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60176146)
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Keywords | 基礎法学 / 公法学 / 西洋史 / フランス革命 / 人権宣言 |
Research Abstract |
平成22年度は、フランス革命期に誕生した官報にあたる『モニトゥール』のリプリント版を本科研費で購入することができ、その貴重な資料を通じて1789年人権宣言の審議過程のなかでどのような議論がなされてきたのかを検討することができた。とくに第17条の所有権の不可侵神聖を定めた箇所の複数形問題についてのレドレールの発言などが重要であることを確認でき、この人物がアンシャン・レジーム期にはパルルマン法院の評定官という役職にあり、法律的な素養を背景にしたことが注目されるところである。 かれは革命期にベッカリーアの親族にも手紙を書き、啓蒙思想のなかの法改革の考えが受け継がれていることがわかるが、それは抽象的な机上の議論といったものではなく、具体的な裁判事件を通してのものであった。その意味で名古屋大学図書館が2010年秋季特別展として『アダム・スミスと啓蒙思想の系譜』のカタログを作成することに参加でき、18世紀の有名な冤罪事件であるカラス事件の資料解説を担当することができたのは、人権宣言第7条から第9条にかけての近代刑事法原理の淵源を見ることにもなった。 社会への研究成果の発信としては、平成22年10月15日に愛知県立半田高校にいわゆる出前講義に行き高校生に向けてフランス革命の話を人権宣言の数種類のポスターなども見せながらその現代にまで行き続ける意義を語ったが、後日送られてきた感想には人権宣言という名前だけ知っていたことを法の観点からみることができておもしろかった等々、好意的に受け止められていて、今後も教育的側面にも力を注ぎたいと考えている。
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