2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530008
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 三記 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (60176146)
|
Keywords | 法制史 / フランス革命 / 人権宣言 |
Research Abstract |
本年度は、2012年3月23日のパリ第13大学と名古屋大学法学研究科との共催による日仏シンポジウム「アジアとヨーロッパにおける人権-確立・制度・保障-」の日本側実行委員長および報告者として最終年度のまとめ的なかたちでの研究成果をフランス語で発表することができた。本研究代表者は法制史の観点から「1789年人権宣言のターミノロジーとイコノロジー」と題して、まず1789年段階の人権宣言のポスターと、人権宣言が2年後1791年憲法の冒頭に置かれた段階でのポスターの文言との違いに注目し、テクストの細部にわたる変更点を検討して、テクスト・クリティークの重要性に注意を向けたあと、具体的には第3条に登場するprincipeということばをアンシャン・レジーム期の辞典等で、それが神学的な意味さえ持ちうること、人権(droits de l' homme)ということばもその初出はルソーの『社会契約論』にあるのだが、そのルソーの使い方は前後の文脈から、じつは同書末尾の「市民宗教」を論じた章に登場するのであり、ここでも宗教的性格をおさえておくことの重要性を示唆しえた。というのも、1789年人権宣言の前文では「最高存在」ということばが出てくるが、これは「神」を意味することはつとに知られており、わが国で最初に1789年人権宣言が紹介されたときの訳では「天神」になっていたことも、日本からフランス人権宣言の読みを照射しうる事例になっているといえる。イコノロジーということでは、公民教育のために革命期の1791年に出されたすごろく遊びの図が参考になり、そこでは人権の概念がアリストクラシー批判に結びついていることを明らかにすることができた。このように、従来の人権宣言の読解とは異なる読みの提示をおこないえたことは、人権宣言のおもしろさをわかりやすく社会に発信するうえでも重要と考える次第である。
|
Research Products
(3 results)