2011 Fiscal Year Annual Research Report
人権の起源をめぐる「ヴェーバー的」問題の法史的・法思想史的考察
Project/Area Number |
21530010
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
佐野 誠 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (90202100)
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Keywords | 権利の章典 / ヴァージニアの権利の章典 / イェリネク / ヴェーバー |
Research Abstract |
本研究は、ゲオルク・イェリネクの『人および市民の権利宣言』(1895年初版)に端を発する人権起源論争を前提に、人権の起源がどこにあるのかを探求するものである。歴史的にはアメリカ諸州憲法の「権利の章典」の信教の自由条項が人権規定の起源とされているが果たしてそうなのか、ということが検討課題であった。23年度は、イェリネクが上記の著作の注で示した、The Federal and State Constitutions, Colonial Chaeters, and Other Organic Laws of the United States, ed. B. P. Pooreを入手して、アメリカ諸州の「権利の章典」、特に信教の自由条項を逐一検討すると同時に、これらに関する2次文献を批判的に考察した。得られた結論は以下のとおりである。(1)イェリネクが世界最古の人権規定と見なしたヴァージニア「権利の章典」の信教の自由条項(第16条)は、最後まで決着のつかなかった条項であり、先行する15の人権条項・規定の基盤となっていないこと、(2)ヴァージニアの信教の自由条項を初めとする諸州の信教の自由条項には、「キリスト教」、「全能なる神」、「神の存在」といった言葉が必ず一度は用いられており、完全な意味での「信教の自由」条項にはなっていないこと。言い換えれば、アメリカ諸州憲法で言う信教の自由とは、全人民のためのそれではなく、プロテスタントのためのそれを意味すること、(3)宗教色を完全に払拭した信教の自由条項は、合衆国憲法修正10箇条(1791年)の修正第1条によってようやく規定されたこと、(4)以上の考察から、信教の自由を人権の起源と見なすイェリネクの見解は、必ずしも正当とは言えないことである。合衆国憲法修正10箇条の制定過程の詳細な検討は、今後の課題として残された。
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Research Products
(4 results)