Research Abstract |
国際機関による法整備支援プロジェクトの内容について,国連開発計画(UNDP),世界銀行(WB)グループ,国際通貨基金(IMF),アジア開発銀行(ADB),ヨーロッパ復興開発銀行(EBRD),アフリカ開発銀行(AfDB),米州開発銀行(IDB),ヨーロッパ連合(EU)に焦点を当て,(1)対象地域・組織,(2)内容(プロジェクト目標・支援手法・実施体制・人員・予算・期間),(3)国内社会に与えたインパクト,(4)国外の個人・組織に与えたインパクトについて,分析・比較した。現段階での暫定的結論としては,(i)同じく国際開発機関の中でも,UNDPは民主化に主眼を置き,国際金融機関は市場化に重点を置きつつも,相互のプロジェクト内容には相当範囲において重複領域も存在し,かつ組織立った調整システムは,十分に確立されていない。(ii)また,同じく国際開発金融機関の中でも,WB・IMF等による世界レベルの法整備支援戦略と,地域レベルの機関との間にも,必ずしも系統立った法整備支援戦略や個別プロジェクトの調整システムは,いまだ十分に構築されていない。プロジェクトによっては,今後相互に重複・矛盾ないし抵触する可能性のあるケースも存在し,調整システムないしルールの構築は,今や緊急を要する課題になっている。その結果,国際機関による法整備支援プロジェクトがもちうる潜在的な国際社会秩序の形成機能はまだ十全に発揮されておらず,地域統合レベルの機関をも巻き込んだ,国際的な法整備協力ネットワーク自体のガバナンス・システムの構築が不可避的な問題となっている。また,これに関して,ASEAN諸国,中国・韓国・日本による法整備協力は,現在構想されている東アジア共同体の形成に向けた動向と,まだ意識的に関連づけられておらず,前者が地域的な国際秩序の形成のために戦略的に用いられる可能性に関しては,流動的である。
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