Research Abstract |
1 様々な主体による法整備支援が被支援国の国内秩序の形成にどのようなインパクトを与えているかについて,(1)国際条約,モデル法等に現れた「国際標準」を国内法に具体化する方向で進められているタイプの法整備支援(カンボディアなど)と,(2)被支援国の歴史,宗教慣習,国民の法意識,発展段階などを考慮し,既存の制定法および慣習法をベースに,新しいルールとの調和を可能な限り図る方向で進められるタイプの法整備支援(ベトナム,ネパールなど)が存在する。1990年代から2000年代前半にかけては圧倒的に前者が多かったが,2000年代後半からは後者も現れ,次第に広まる傾向がある。 2 国内秩序の改善・安定化が国際関係に与える影響,反対に,国内秩序の不安定化・崩壊が国際関係に与える影響について,(1)国内法秩序の改善・安定化と対外投資の増大,経済成長との相関関係が見出されるパターン(ラオス,ミャンマーなど)と,(2)国内秩序の不安定化と対外投資の減少,経済成長の停滞との相関関係が見出されるパターン(パキスタン,ネパールなど)が存在する。 3 法整備支援が国内レベルの良い統治の構築に寄与しうるためには,(1)国内の慣習,宗教,法意識,その他の既存のルールと新たに導入しようとするルールとの調整,(2)薪たに制定・改正されたルールについて,とくに地方のコミュニティ・レベルの紛争解決システムの担当者への普及,(3)新たなルール形成プロセスへの参加によるオーナー意識の醸成がきわめて重要な意味をもつ。
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