2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530019
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 教授 (90215731)
|
Keywords | 憲法 / 多文化主義 / アファーマティブ・アクション / 平等原則 / カナダ憲法 |
Research Abstract |
本研究は、日本国憲法の下で多文化主義が有しうる具体的規範内容を、主に、多文化主義とアファーマティブ・アクションとの関係という側面から分析し、多文化主義の主要な規範的内容を具体的に解明することを目的とする。平成21年度は、「カナダ憲法の比較検討」を中心に、「日本国憲法の検討」も並行して行った。カナダ憲法に関し、多文化主義条項(1982年憲法27条)の具体的規範内容と、アファーマティブ・アクションを容認する平等権(1982年憲法15条)の具体的規範内容を判例と学説の分析を通して検討した。その結果、(1)多文化主義には反差別の規範的要請が強く、差別を受けている個人や集団の尊厳を守ることが多文化主義の規範内容であること、(2)カナダ憲法は実質的平等観に立脚し、アファーマティブ・アクションを許容しているが、個々人がアファーマティブ・アクションを要請する権利を有するか否かについては議論があること、(3)差別を受けている個人や集団の尊厳を保護することを目的とするアファーマティブ・アクションは、憲法上特に強い正当性を有しうること等が明らかになった。後者に関し、日本国憲法の下での平等権保障の意義、アファーマティブ・アクションの許容性の有無、アファーマティブ・アクションの権利性の有無等について、判例が乏しいため、主に学説の分析を行った。学説は一般に、アファーマティブ・アクションを、(1)アファーマティブ・アクションは、どこまでなら憲法14条に反しないかという性質のものであり、それは合理的区別として正当化される限りで憲法上認められる、(2)憲法14条には、アファーマティブ・アクションを要請する権利は含まれていない、(3)国はアファーマティブ・アクションを実施することはできるが、それは法的義務ではない、と理解していることが明らかとなった。
|