2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530019
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90215731)
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Keywords | 憲法 / 多文化主義 / アファーマティブ・アクション / 平等原則 / カナダ憲法 |
Research Abstract |
本研究は、日本国憲法の下で多文化主義が有しうる具体的規範内容を、主に、多文化主義とアファーマティブ・アクションとの関係という側面から分析し、多文化主義の主要な規範的内容を具体的に解明することを目的とする。平成22年度前半は、カナダ憲法における多文化主義とアファーマティブ・アクションの関係を、具体的な判例および学説を中心に分析した。その結果、多文化主義は、少なくとも、特定の文化の維持が困難な状況にある場合、その文化の維持を可能とするようなアファーマティブ・アクションを要請しうることが明らかとなった。また、平成22年9月12日から18日の間、カナダのトロントに海外出張し、トロント大学法学部の図書館でカナダ憲法の多文化主義と平等権に関する調査と日本では入手困難な資料の収集を行った。当初、トロント大学で憲法および先住民法を教えているP.マックレム教授、同大学で憲法を教えているK.ローチ教授にインタビューし、研究のレビューを受ける予定であったが、両教授の都合がつかず、インタビューとレビューは行えなかった。平成22年度は、日本国憲法の下での多文化主義の性格、規範内容、位置づけについて、関連する判例と最新の学説を分析した。そして、少なくとも、国家により差別を受け、その結果、当該被差別集団が有する文化の維持が困難になっている場合は、当該集団またはそれに属する個人は、文化の維持のために一定のアファーマティブ・アクションを要請する資格または権利が認められる理論的な可能性が残されていることが明らかとなった。
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