2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ基本法2条1項の私的領域の保護の基本構造について
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21530022
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上村 都 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30374862)
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Keywords | 公法学 / ドイツ / 人格権 |
Research Abstract |
1、本研究は、ドイツ基本法2条1項が保障する私的領域の保護の内容および射程について、ドイツ憲法学を素材に検討することを目的としている。 2、まず、本年度は、私的領域の保護を含む人格権の保護の射程について、ドイツの憲法学説を中心に整理・検討を加えた。人格権は、憲法上でも、また私法上でも登場する概念であるが、具体的な裁判において争われている人格権が、憲法上の保護法益なのか、それとも私法上の保護法益なのかは、これまで十分に議論がなされてこなかった。憲法上の利益と私法上の利益とでは、保障のされかたに違いがあるにもかかわらず、両者の区別を意識せずに判例において用いられてきた。本研究では、両者の異同について、両者の作用領域という視点から、ドイツの学説を中心に検討した。ドイツでも、2000年ごろまでは、両者の区別を意識せずに人格権という言葉が用いられてきたが、それ以降、それぞれの作用領域が異なるとする見解が登場してきた。それによれば、憲法上の人格権は、「過剰」な侵害と「過少」な保護だけを忌み嫌うのであり、その中間領域が、私法の領域であるとされる。本研究では、このような見解が、憲法の過剰な内乳を防ぎ、同時に、私法の独自性を尊重するものであり、わが国にとっても参照に値するものであることを、明らかにした。 3、人格権を保障した基本法2条1項は、わが国の憲法13条の幸福追求権に相当する権利であり、ドイツにおける上述のような議論は、日本国憲法13条が保障する人格権の射程を考える上で、重要な示唆を与えるものであると思われる。(この研究成果は、全国憲法研究会において「憲法上の人格権と私法上の人格権」と題して報告したほか、まもなく『憲法問題』に掲載される予定である。)
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