2011 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ基本法2条1項における私的領域の保護の基本的構造について
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21530022
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上村 都 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30374862)
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Keywords | 公法学 / ドイツ / 人格権 |
Research Abstract |
1.本研究の目的は、ドイツ基本法2条1項の私的領域の保護の内実および個々の権利の特徴、法的性格について、ドイツの憲法判例・学説を素材に検討することにある。ドイツの議論を手がかりに、わが国におけるプライバシー権の内容について再検討することを目標としている。 2.今年度は、差別的表現に関する論考が公刊された。差別的表現の許容性は、ドイツでは集団に対する侮辱的表現の問題として論じられ、問題となった表現の侮辱的効果が個々の集団構成員に波及するかどうかで許容性の可否が定まるとされており、個人の尊重を出発点とするわが国の憲法学にとっても整合的であることを指摘した。 3.今年度は、消極的情報の自由の法的性格について考察した。情報の自由、とりわけ消極的情報の自由は、表現の自由から派生する権利か、それとも幸福追求権に基礎づけられるかという問題について、ドイツでは、基本法に情報受領権が明記されていることから、おおむね表現の自由に結びつけるのが一般的である。しかし、消極的情報の自由が作為請求権を含むかどうかについては慎重な態度を示している。消極的情報の自由も防御権であることに変わりはなく、その援用が許容されるのは、単なる迷惑ではなく、いかなる回避可能性もない場合に限られるべきとの結論に至った(この研究成果は、『憲法と司法--アメリカ憲法学の源流と現在』(尚学社・近刊)に掲載される予定である)。
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