2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530029
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
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Keywords | 環境国家 / 法治国家 / 事前配慮国家 / 保証国家 / ドイツ法 / 憲法 / 環境法 / 予防原則 |
Research Abstract |
環境国家の法構造を法治国家の視角から解明することを目的とする本研究において、本年度は、研究の最終年度として、「法の具体化」及び「法の手続化」並びに「事前配慮国家」及び「保証国家」という概念を用いて、環境国家の諸側面にアプローチし、憲法論的に重要と思われる点について、いくつかの示唆を得ることに努めた。 その結果、基本権論の領域において、一定の成果をあげることができた。特に、私人間における権利関係やグローバルな権利関係(国際人権)に関して、国家の果たすべき役割を再考し、国家の限界と並んで、国家の積極的な作用(基本権保護義務)の意義を、それがもたらす問題点を含めて、具体的な事件(たとえば、泉南アスベスト事件)との関わりで、考察することができた。 本年度は、理論研究のみならず、環境実務家との交流を積極的に進めたこともあって、彼らとの協働の成果を『ビジネス環境法』という形でまとめることができた。こうした実務家との共同作業は、理論研究に対しても、きわめて有益であった。 また、比較法研究の対象としているドイツの環境国家論に関して、本年度も、ベルリン自由大学のフィリシプ・クーニッヒ(Ph.Kunig)教授とボン大学のクリスティアン・ヴァルトホッフ(Ch.Waldhoff)教授の協力を得ることができた。彼らとの共同研究を通じて、申請者は日独の環境国家論比較の視点を本研究に反映させることができた。「法の具体化」及び「法の手続化」並びに「事前配慮国家」及び「保証国家」という概念枠組みも、いうまでもなく、ドイツ公法学からの転用である。 本研究の遂行を通じて、申請者は環境リスク規制の正当化問題の重要性に気がついた。来年度以降は、「環境リスク規制の法構造と正当化可能性」をテーマに、本研究の成果を生かした新たな研究に着手し、発展させていきたいと考えている。
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