2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530035
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
渡辺 康行 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30192818)
|
Keywords | 三段階審査 / 比例原則 / 平等 / 違憲審査基準 / 信教の自由 / 立法者による制度形成の審査 / 判断過程統制 |
Research Abstract |
本研究の主題である「憲法上の権利に関する論証作法の再構築」に関して、自由権についての三段階審査・比例原則という審査枠組みは、ここのところ急速に浸透してきた。そのため平成23年度の研究の重点は、自由権以外の憲法上の権利に関する論証作法を構築することに置いた。 平等原則という客観法原則に関する審査手法を研究したのが、「平等原則のドグマーティク」という論稿である。平等原則に関しては、固有の保護領域が観念できないため、三段階審査は当てはまらない。これまでの判例を分析した上で、今後の発展方向を展望するならば、別異取扱いとその正当化という二段階審査が行われるべきこと、正当化に関しては、人の区別の可否の審査と、別異取扱いに関する比例原則を基礎とする審査が行われるべきであることを論じた。選挙権・選挙制度は、その内容が立法者による制度形成に依存した権利の代表格である。平成23年の衆議院選挙に関する大法廷判決の判例評釈という形をとった論稿では、この分野において、最高裁が、立法者の自己拘束、時の経過、判断過程統制といった手法を使って立法者の制度形成を審査しようとしており、それは有効であることを論じた。 これらの研究と並行して、自由権に関する三段階審査についても、研究を続行している。法律時報増刊号に掲載した「『合理的関連性の基準』の再検討」は、表現の自由の領域に関するものである。また『国家と自由・再論』に掲載した論文は、思想・良心の自由と信教の自由の領域に関するものである。これらの研究によって、三段階審査の具体的な使用方法について考察を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由権、客観法規範、立法者の制度形成に依存する権利それぞれについて、研究を行い、その成果を論文などの形で公表してきた。またその論文は、学界において比較的広く読まれ、影響を与えつつあるように思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
この後も、自由権、客観法規範、立法者の制度形成に依存する権利それぞれについて、素材をより広くとって研究を進めたい。さしあたり、次に論文化する予定なのは、客観法規範の典型である政教分離原則に関する審査手法である。この領域では、近年、空知太神社事件に関する大法廷判決が出され、従来の判例の立場であった目的・効果基準が動揺していているとも言われる。この領域における判例法理をもう一度読み直した上で、今後の方向性を探る作業を行いたい。
|
Research Products
(5 results)