2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530035
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
渡辺 康行 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (30192818)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 三段階審査 / 比例原則 / 平等原則 / 政教分離 / 信教の自由 / 思想・良心の自由 / 立法者による制度形成の審査 / 裁量審査 |
Research Abstract |
本研究も4年度目となり、研究はかなり進展してきた。 平成24年度は、まず、防御権に関する三段階審査の手法をもっとも典型的に用いることができ、またこれまでの私による研究が最高裁判決にも影響を与えている思想・良心の自由の領域に関して、論究ジュリスト1号に論考を掲載した。この論文は、公立学校の儀式的行事における国旗・国歌問題に関する、近年の最高裁判決の論理を、下級審における判例状況の文脈のなかで分析したものである。掲載した雑誌が目につきやすいものであったため、関係する訴訟を担当する弁護士などからの反響も少なくなかった。 また客観法規範適合性に関しては、政教分離規定を素材とした論文を、季刊企業と法創造に発表した。従来の判例は、政教分離規定適合性を審査する際に、まず、国家と宗教の「かかわり合い」の有無やその態様の審査を行い、そのあと、「かかわり合い」が正当化されるかどうかの審査を行っていることを析出した。周知の目的効果基準とは、「かかわり合い」の正当化審査において用いられるものであった。そのように分析することによって、さらに、判例では「かかわり合い」の態様によって「かかわり合い」の正当化審査の密度が変わっていることや、目的効果基準の考慮要素とされたもののなかに、「かかわり合い」の審査に用いられるものと、正当化審査に用いられるものとが区別されることなど、新たな考察への道が開かれることとなった。 さらに、この論文の姉妹編として「政教分離原則と信教の自由」という論考も執筆した。平成25年夏ごろ公刊が予定される。また、『事例研究 憲法(第2版)』のために5本の解説を執筆している。これは、これまでの研究を踏まえて事例に即した考察の仕方を、法科大学院生向けに解説したものである。こちらも平成25年6月ごろには公刊されることになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、防御権、客観法規範、立法者の制度形成に依存する権利それぞれについて研究を行い、その成果を論文などの形で公表してきた。またそうした論文は学界で比較的広く読まれ、引用されるだけではなく、裁判実務に対しても影響を与えつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の課題は、まず、これまでの研究では十分になされてこなかった、憲法上の権利を行政裁量審査のなかで実現する仕方について、これまでの判例・学説を踏まえて考察することである。また平等原則について、日本における判例の立場の基本となった尊属殺判決を素材として、さらに研究を深めたい。 平成25年度は、研究の最終年度となるため、個別領域に関する論文を発表するだけではなく、従来から行ってきた研究を体系化する作業も行う。
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