2010 Fiscal Year Annual Research Report
司法制度の設計及び裁判実務における「訴訟基本法」としての憲法の機能に関する研究
Project/Area Number |
21530036
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
片山 智彦 福井県立大学, 学術教養センター, 准教授 (30294002)
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Keywords | 司法制度 / 憲法 / 行政事件訴訟法 / 裁判を受ける権利 / 法実務 |
Research Abstract |
本研究は、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)の平成16年改正を素材として、法実務において憲法が果たすべき機能を解明し、明確化することを目的とする。3年計画の研究の2年目に当たる平成22年度は、当初の計画通り、行訴法改正の立法過程と改正後の行訴法(以下「改正行訴法」という)施行後の最高裁の裁判例の分析を行った。 前者については、前年度に引き続き、政府の司法制度改革審議会と司法制度改革推進本部(顧問会議及び行政訴訟部会を含む)の議事録、意見書その他の資料及び行訴法改正前後の学説の動向を調査し、憲法の機能の観点から分析した。その結果、改正の過程においては、「法の支配」の理念との結びつきにおいて「司法の行政に対するチェック機能の強化」や「国民の権利利益の実効的救済」が強調されたが、憲法の個別の規定の具体的な規範内容との関連は、法制実務と学説のいずれにおいても十分には意識されていなかったことが明確になった。 後者については、最高裁の改正行訴法施行前後の裁判例をできる限り広範に検索、収集するとともに、判例評釈類も精査しつつ、裁判例の内容の分析を行った。近年の最高裁の裁判例は、とりわけ改正行訴法施行後において、従来の裁判例と比較して、国民の権利利益の保護により積極的な傾向を示している。この点、本年度の研究の結果、上記の傾向は、それぞれの裁判の結論に着目すると憲法価値の実現に資するものと評価できるが、裁判の理由付けに目を転じると、憲法の規定が訴訟法の解釈規準または裁判所への授権規範として必ずしも適正に機能していないことが明らかになった。 これらの研究結果は、平成23年度以降に研究論文として公表する予定である。
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