2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化による国家の構造変化と立憲主義の再構築
Project/Area Number |
21530037
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山元 一 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (10222382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 民雄 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90237412)
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Keywords | 立憲主義 / グローバル化 / ヨーロッパ統合 / 共和主義 / ポスト・ナショナル |
Research Abstract |
山元は、フランス語圏および英語圏で、EU憲法理論が、各構成国の国内憲法理論および政治理論との緊張関係の中で、どのようなフレーム・ワークに基づく立論をしているかについて鳥瞰的に検討した。その問題意識は、ひとまず「方法論的ナショナリズム」から自由な観点を設定したとき、いかなる議論が展開可能であるかについて、その様相を把握するところにある。より具体的にいえば、(1)フランスにおけるナショナル共和主義の思想的潮流、(2)イギリスにおける自由主義的ナショナリストの思想的潮流、(3)フランスにおけるポスト・ナショナルな思想、(4)英語圏におけるポストモダン・立憲主義論の動向に分類した上で、それぞれの潮流における主要な論者がいかなる論点に注目し、議論を展開しているかについて跡付けた。 中村は、EU憲法理論を考察するために、リスボン条約によるEUの対外関係の新しい法制度の特徴と問題点を分析する論文を執筆した。リスボン条約では、対外関係の面が最も重大な変更を受けたからである。さらに、リスボン条約による実体法上の性質変化として、EU法上の人権保護を強化するために、EU基本権憲章に法的拘束力を与える改革も行われた。これに伴い、従来のEU実体法に関する欧州司法裁判所の特徴であった、経済的自由権の優先的な保護の姿勢がどれほど変化をみせるかを考察した。初期段階の考察ではあるが、労働基本権と経済的自由権(会社の移動の自由)との対立が争点となったヴァイキング事件について、詳細な考察を行った。
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