2010 Fiscal Year Annual Research Report
「安全」目的の人権制約に関する許容条件法理についての比較法的・総合的研究
Project/Area Number |
21530039
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西原 博史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10218183)
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Keywords | 比例原則 / 法治国家 / 対テロリズム規制 |
Research Abstract |
本研究は、国民生活の「安全」確保という国家目的の意義が重視される現在の社会状況において、憲法上の「比例原則」という理論要素を手がかりに、憲法上の権利に対する制約の許容性に関わる規範的判断の構造化指針の提供を目的とする。この比例原則は、一方において「安全」目的の外見的な圧倒的意義の前に空転の危機に直面しているが、他方でなお、特定の個人的利益を絶対化する過ちを避けながら適切な利益調整を法的次元で実現できる不可欠の理論要素としての意義を高めている。 本年度においてはまず、特に差別と社会的包摂をめぐる問題設定において、20世紀型の平等取扱原則を軸にして比例原則の適用によって問題解決をはかるアプローチと異なって、社会的障壁を設定する社会の側の責任を踏まえた社会的包摂アプローチが世界の議論において表面化している現状を踏まえて、その領域において「規制の許容条件」を語り得るための前提構築の作業を行った。 2010年12月には、開催が前倒しとなった国際憲法学会第8回世界大会において、「予防国家状況における比例原則への挑戦」と題された報告を行い、事前配慮原則が認められることによる法治国家の変質において、比例原則が空転する危機が生じていること、だからそれゆえにこそ比例原則の基本原理を相対化から守る構造把握が必要であることを論じた。この報告に基づき、各国の状況を踏まえた問題提起を受け、多くの示唆を得た。 こうした作業を踏まえて本年度においては、各サブ・プロジェクトにおける実質的な研究を深め、研究協力者との共同研究体制を構築し、次年度以降に効果的な成果発表につなげられるよう実質的な研究実績の蓄積に務めた。
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