2011 Fiscal Year Annual Research Report
「安全」目的の人権制約に関する許容条件法理についての比較法的・総合的研究
Project/Area Number |
21530039
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西原 博史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10218183)
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Keywords | 比例原則 / 法治国家 / 対テロリズム規制 |
Research Abstract |
本研究は、国民生活の「安全」確保という国家目的の意義が重視される現在の社会状況において、憲法上の「比例原則」という理論要素を手がかりに、憲法上の権利に対する制約の許容性に関わる規範的判断の構造化指針の提供を目的とする。この比例原則は、一方において「安全」目的の外見的な圧倒的意義の前に空転の危機に直面しているが、他方でなお、特定の個人的利益を絶対化する過ちを避けながら適切な利益調整を法的次元で実現できる不可欠の理論要素としての意義を高めている。 本年度においてはまず、本研究の中心的課題について体系的視点を提供する論文'Challenges to Proportionality Principle in the Face of "Precaution State" and the Future of Judicial Review'を完成させ、雑誌に発表した。これは、2010年の国際憲法学会世界大会報告を踏まえ、そこでの議論の成果や、その後の理論的状況の変化などを織り込み、体系的視点を示すものとして完成されたものである。 それと直接に関係する具体的な問題領域に関し、2012年3月には招聘された大韓民国でのシンポジウムにて報告を行った。リスク社会における人権規制が、国家の財政負担を通じて再び他者加害を理由とするものに転換する可能性と、その場合の法的防御枠組みを扱う報告を完成された。 さらに、2010年度に集中的に扱った差別と社会的包摂をめぐる問題設定において「規制の許容条件」を語り得る理論枠組の構築作業につき、本年度、形式的平等論を基軸に据えることによる理論的可能性が確認され、論文として発表した。 こうした作業を踏まえて本年度においては、各サブ・プロジェクトにおける実質的な研究を深め、次年度に最終的な研究成果の取りまとめができるよう実質的な研究実績の蓄積に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題を区分した各プロジェクトにおいて、中間的な成果としての論文に現れる研究成果が蓄積され、全体の体系化を行う際の視点も見えてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の各部分ブロジェクト、すなわち現時点における重点課題との関係で整理しなおすと、(1)リスク社会における規制状況と比例原則の適用可能性、(2)社会的包摂を目的とする国家介入における目標安定化と過剰介入防止の法約枠組みづくり、において、今年度に公表することができた成果を踏まえ、最終的な総合化を行い、来年度中に体系的な理論枠組を完成させることを目指す。その基盤は十分に獲得されている。
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