2011 Fiscal Year Annual Research Report
行政の情報収集・提供義務の不作為に対する司法的統制とその問題点
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21530040
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北村 和生 立命館大学, 大学院・法務研究科, 教授 (00268129)
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Keywords | 公法学 / フランス法 / 行政法 / 国家補償法 / 行政調査 |
Research Abstract |
本研究は、行政にどのような情報提供・情報収集義務が課せられるか、それはどのような法的根拠に基づくかを、フランス法との比較研究から明らかにすることを目的とする。 平成23年度も、前年度に引き続き、法律による調査権限が認められる場合の判例分析を行った。これらの分野には平成22年の最高裁判決を始め多くの判決が近時見られる。特に、固定資産税における地方公共団体の職員の調査義務の不履行により、誤った租税賦課処分なされ、それに対して、国家賠償請求がされた場合の検討を行い、法律上の調査権限が定められているこれらの事例においては、調査義務違反が過失として認められていることを明らかにした。一方、同じ課税処分に関わる事例であっても、法律上の根拠が明らかでない場合には、調査義務の不履行が国家賠償法上の過失として認められることは少なく、法令上の規定の有無やその規定の仕方が大きな意味を持つことが明らかとなった。また、調査義務違反が問題となる場合には、当該調査義務の履行が困難であることは、義務違反を認定する上では判例上重視されていないことも明らかとなった。 第2に、フランス行政判例の整理分析も継続して行った。フランスでは、憲法上保障された予防原則を根拠に、行政に広い調査義務が肯定されることにより、規制が強化されることによる救済手段の必要性が問題となっている。これらの点に付き、最近のフランスの判例法理においても、わが国の損失補償に類似する救済がとられていることを明らかにしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
わが国の主要な判例の分析はほぼ計画通りである。もちろん、本研究のように最近の問題を扱う場合には新たな判例が見られることにより、研究対象が拡大することはあるが、想定範囲内である。 フランス行政判例についても、おおむね研究は進んでおり、特に、オンライン・データベースの利用により資料収集やその整理が容易となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究では、税法と異なり、調査権限を根拠づける明文の規定がない分野の裁判例を中心に研究することとする。例えば、違法な建築確認を発付したことによる国家賠償請求の判決が、過去1年に一定の蓄積を見せていることから、これらの裁判例を素材として研究を行う。 フランスとの比較法研究については、コンセイユデタ判決を中心とするのは従来通りであるが、下級審判決についても着目していくこととする。下級審判決については、判決本文以外の資料を入手することが困難な場合も少なくないが、重要なものについては参照可能なので、このような分野への研究も適宜進めることとする。
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Research Products
(1 results)