2009 Fiscal Year Annual Research Report
政教分離原則における国家の非宗教性に関する比較法研究
Project/Area Number |
21530041
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
小泉 洋一 Konan University, 法学部, 教授 (80195643)
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Keywords | 憲法 / 政教分離原則 / 国家の非宗教性 / ライシテ / 世俗主義 / フランス / メキシコ / トルコ |
Research Abstract |
本研究の初年度に当たる当年度は、その研究目的および研究実施計画に従い、わが国においてこれまで研究が皆無であったメキシコに関する研究に集中した。また、メキシコにおける国家の非宗教性を研究するため、まずその前提となるその憲法の歴史および憲法における政教関係条項を研究した。次いでメキシコにおける国家の非宗教性に関する法令規定も詳しく研究した。そうした研究とともに、メキシコおよび他国における国家の非宗教性を有効に比較分析するために有効な国家の非宗教性に関する概念も研究した。また研究目的および研究実施の計画にあったトルコに関する研究はトルコへの研究出張を2010年2月に行ったため、トルコに関する研究成果はこれからである。 当該年度の研究から以下の成果があった。 メキシコ憲法の進展について、メキシコ社会において大きな影響力を持ったカトリック教会が、特権階級から構成された保守に与しつつ、自由主義的な政治にたびたび介入して国の近代化を妨げていたことを背景として、きわめて強力な国家と教会の分離が19世紀半ばに確立して以来、国家の非宗教性が厳格に規定され、さらに法令においてもそれが厳格に実施されている。そこでは、その歴史を反映して、宗教教師の政治的権利の制限など国家事項への宗教の不介入が、国家による宗教の優遇の禁止など宗教事項への国家の不介入よりも優位している。他方、国家の非宗教性の概念に関しては、国家と宗教が初めから分離していなかった国がほとんどであることから、国家と宗教が分離され国家が非宗教化されていく過程をも考慮して、その概念を定立するのが妥当であると考えた。そのため、今のところ、国家の非宗教性を以下のような3つの要素からなるものとしてとらえるべきではないかと考えている。1国家と宗教の組織的な切り離し、2宗教事項への国家の不介入、3宗教の国家への不介入である。メキシコにおける国家の非宗教性についてはこれら3要素をみることができる。 これがフランス、トルコ、わが国などにも妥当するのか、妥当するとすれば、それに基本づき国家の非宗教性を比較分析するが、今後の課題である。
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