2009 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪人引渡法の変容と展開-国際テロ、組織犯罪との関連において
Project/Area Number |
21530049
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
北村 泰三 Chuo University, 法務研究科, 教授 (30153133)
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Keywords | 国際法 / 国際刑事法 / 国際犯罪 / 犯罪人引渡法 / 国際人権法 / 犯罪人引渡条約 / EU共通逮捕状 / ヨーロッパ人権条約 |
Research Abstract |
本年度は、主として予備的調査の延長線上において、EUにおける共通逮捕状制度に関する問題点を検討した。欧州共通逮捕状の有効性に関するEU裁判所の判例の検討を行ってきた。EU裁判所の判例では、共通逮捕状と人権との関係については、矛盾、抵触がないとの態度が維持されている。 2010年2月末から3月にかけて、別の科研費共同研究グループの一員としてヨーロッパ諸国に調査研究に当たってきた際には、ハンガリー、チェコ、オーストリアの憲法裁判所を訪れ、EU共通逮捕状制度の運用に関する質疑も行ってきた。それらを通じて、EU共通逮捕状枠組み決定は、さまざまな点、特に自国の国内法の人権規定との関連において各国の裁量的運用が行われており、必ずしも統一的な運用は行われていないのではないという印象を強くもった。例えば、ドイツやポーランドでは自国民不引渡原則により引渡請求を拒否する対応がなされているが、他の国でも、一事不再理(2重の危険)の原則、双方可罰性の原理などにより不引渡とされることが見られることが分かった。詳細について、今後の研究を進展していく上での重要な視点になるかと思われる。 ヨーロッパ人権条約と犯罪人引渡との関連においても引き続き判例の検討を行ってきたが、2009年度中に新たな研究成果の公表には至っていない。 国際犯罪としての強制失踪に関する研究においては、強制失踪条約の意義を検討する中においで、強制失踪が国際法上の犯罪として引渡の対象とされるべきことが明記されている。条約であるから批准しない限り、厳密には法的拘束力を欠くが、北朝鮮による拉致事件に関して、我が国が、北朝鮮当局に対して容疑者の引渡を求めるための重要な根拠となりうると思われる。
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