Research Abstract |
本年度は,本研究の最終年度であり,昨年度の調査・研究を総括し,具体的な成果をとりまとめることに集中した。 昨年度までの研究からすると,わが国の情報財の保護は,その外形的保護と情報内容の保護とを混同して議論されてきたことが明らかとなっており,刑事法的保護のあり方を考える場合,両者を区別し,情報の外形的保護をどのように図るべきなのかということを検討すべきことが明らかとなった。そこで,情報の外形的保護を正当化する根拠を基礎づけることができるのか,基礎づけることができるとしてどのような保護のあり方が検討されるべきなのかという総論的な課題を集約し,その枠組みとして情報セキュリティを用いることが可能ではないかとの結論にいたった。この点について,早稲田大学刑事法学研究会において,試論を報告し,種々の批判,検討すべき課題等の指摘を受け,それらを克服するかということを考慮しながら,検討を重ねた。 また,ドイツのクートリッヒ教授,ヒルゲンドルフ教授とも意見交換して,ドイツ法からみた問題点などの指摘を受けた。 一応の帰結としては,主に財産的価値のある情報について,その保護客体としてのあり方を刑法のみならず,特別刑法の領域にも渡って検討し,情報それ自体を客体して保護をすることと,情報の化体する媒体を客体として保護することが混同されてきたことを明らかにし,その峻別による刑事立法の方向性を明らかにした。
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