2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒巻 匡 京都大学, 法学研究科, 教授 (50143350)
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Keywords | 刑事法学 / 刑事訴訟法 / 証拠開示 / 公判前整理手続 |
Research Abstract |
1.昨年度に引き続き、証拠開示法制度の運用状況を網羅的に把握し分析する作業を継続した。 平成23年末までに最高裁判所刑事局が収集した、全国の証拠開示に関する裁定事例をすべて閲読し、平成21年度に刊行した編著書『刑事証拠開示の理論と実務』で呈示した基本的な理論枠組の検証と補完の要否について検討した。現在までの所大幅な理論的枠組を修正する必要はないとの見通しである。 2.主としてアメリカ合衆国及びイギリスの公判前証拠開示手続とその周辺の法制度及び運用に関する文献資料の収集と分析を継続した。いずれについても、近時に大規模な法改正や制度運用の激変は認められず、ここで得られた知見それ自体を論説文として紹介すること自体には重要な意味は認められないとの見通しである。もっとも、昨年度においても言及したとおり、これらの法制度と運用を支えている刑事手続制度に対する関係法律家の基本目標や理念の部分を析出してできる限り明晰に言語化し、これをわが国の法律家とくに刑事弁護人の抱いている刑事手続制度に対する意識や基本目標・理念と対比し、どのような点にズレがあるかを明らかにする仕事の素材として貴重であろうとの見通しを得た。そこで、このような観点については、昨年度に実施した現行法制度の趣旨と理論的基礎について弁護士に対して行った講演を活字化した論説文の中で言及した(研究発表参照)。 3.以上のとおり、本研究の主目的である、あらたな証拠開示法制度の解釈・運用に関する理論的基礎の構築と、現実の運用において生じている法的諸問題の析出、及びその解決の方向性の呈示は、ほぼ完遂することができた。
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Research Products
(1 results)