Research Abstract |
研究開始の最終年度である平成23年度は,前年度までにおこなった国際条約に基づく責任制限の実施にかかる手続に関する各国法制の多様性の調査結果に関する分析を踏まえ,最終的な成果発表に向けた成果取りまとめを行った.具体的には,(1)責任制限手続開始のための期間制限の有無,(2)責任制限の効果,(3)責任制限手続への参加の期間制限と時期に遅れた参加の効果,(4)制限債権の確定手続・債権の存否・額に関する異議の制度,(5)責任制限手続と破産制度の関係といった点についての調査結果をまとめる,また,また国際民事手続法・国際私法に関わる一般的な論点もあわせて検討した. なお近時,油濁損害にかかる民事責任制限条約(わが国では船舶油濁損害賠償保障法)に基づいて責任制限基金が形成された場合に,基金限度額を超える(しかし国際油濁補償基金の限度額にはおさまる)ことが明白な場合に,各被害者(債権者)に按分額を支払うのではなく,被害額全額を支払い,基金限度額まで支払った後は,債権者に対して国際油濁補償基金に支払ってもらうようにするという形で,迅速な支払いを実現する実務慣行があること,ただそれが続けられるために各国裁判所における責任制限基金の扱い等で,適切なバックアップが必要であるという問題提起が,P&I保険国際グループによって提起されている.本研究では,この問題も検討対象に加えたが,現段階では国際油濁補償基金における議論が迷走しており,実務的な進捗は見られない.このため本研究においても問題点の指摘・分析にとどまった-第2に,1996年議定書によって改正された海事債権についての責任の制限に関する条約についての改正手続の最終段階に入っており,平成24年4月には際額される見込みであるので,その結果をフォローすることにしたい.
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