2011 Fiscal Year Annual Research Report
現行知的財産法制度下における地域ブランドの確立と課題
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21530077
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
渡辺 森児 近畿大学, 法務研究科, 教授 (30327126)
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Keywords | 地域ブランド / 知的所有権 / 商標法 |
Research Abstract |
平成17年商標法改正により新設された地域団体商標制度が施行され5年が経過し、今日まで、当該制度により申請・登録を行った例が確実に増加している。このことは、近年、地域における事業者が一体となって、当該地域の資産価値を高める活動の1つとしての「地域ブランド」の確立の動きと法制度とがようやく符合してきた証左である。しかし、申請までに要する時間や労力、または登録まで至った団体商標の機能を調べてみると、法律の定めた要件や効果について未だ解決されない問題が存在することが分かった。その代表的なポイントを挙げると、第一には、現在の地域団体商標制度は、必ずしも地域の事業者全体に開かれたものとはいえないということ、第二には、商標法は「ブランド」の品質維持についての配慮が十分でないこと等である。 3年計画の最終年は、2年目に中間報告の段階として纏めた論稿において整理・分析した、地域団体商標制度の法的問題点をふまえ、さらに実際に当該制度を利用した実例を、とくに日本の都市部以外の地域について調査した。その結果、地域団体商標として登録される傾向には、地域や事業分野の特性によって差があり、また、事業者が地域復興として想定する「地域ブランド」という語義には社会的経済的意味において多様性があることが分かった。他方で、いわゆる知的財産としての「地域ブランド」には、法的権利として保護しなければならない側面があることは疑いが無く、そうした視点での現実の問題が存在することを確認した。したがって、当初設定した問題意識には十分の根拠があり、法制度およびその解釈によって解決できる領域があるとの結論を得た。
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