2010 Fiscal Year Annual Research Report
企業結合関係にある会社間の利害調整と取締役の行為規制
Project/Area Number |
21530083
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 雅史 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (90204916)
|
Keywords | 会社法 / 株主代表訴訟 / 株主権の縮減 / 企業結合 / 親子会社 / キャッシュアウト / セルアウト / 公開買付け |
Research Abstract |
平成22年度は、企業結合関係にある会社間の利害調整問題を、I親会社株主の保護、II子会社少数株主の保護、IIIキャッシュアウトとセルアウトに大別し、それぞれ比較法的視点を踏まえて検討した。I親会社少数株主の保護の問題は、いわゆる株主権の縮減に関連する論点であるが、これに関しては、子会社の基礎的変更に親会社株主の関与を認めるか否か、子会社取締役の子会社に対する任務懈怠責任を親会社株主が訴訟上追及できるか(多重代表訴訟を認めるか)否か、の2点について、アメリカおよびドイツの制度を参考にしつつ、日本の経済界の意見等を批判的に検討しながら、制度論を展開した。II子会社少数株主の保護に関しては、親子会社間取引における親会社による子会社利益の搾取に対処するため、親子会社間取引についての開示規制の充実と、子会社株主による親会社の責任追及制度の導入について、アメリカおよびドイツの制度との比較研究と日本の現行ルールの検証を行い、今後の議論の方向性を明らかにした。IIIキャッシュアウトとセルアウトに関しては、企業結合形成過程において従属企業に居残った株主を締め出すことの正当性および居残った株主への退出権の付与について、EUの公開買付指令を比較対象として検討した。ここでは、株式併合や全部取得条項付種類株式という本来締出しを目的としていない制度を利用して実質的に少数株主を締め出している現状を批判的に検討し、少数株主の保護に適合する新しい締出し制度の創設と、少数株主に株式買取請求権を認めるべきことを、金融商品取引法において導入すべきことを提言した。以上の研究は、大証金融商品取引法研究会において報告し(平成22年9月)、同研究会の報告書に掲載するとともに、商事法務の新春座談会においても研究成果を踏まえた討論を行った。
|