2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 雅弘 京都大学, 法学研究科, 教授 (50240817)
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Keywords | 定款自治 / 全株式譲渡制限会社 / 種類株式 / 株式の譲渡制限 |
Research Abstract |
平成17年制定の会社法は、全株式譲渡制限会社と公開会社とで、相当に異なった規律を採用しており、その違いの多くは、全株式譲渡制限会社について、公開会社には認められない定款自治を認めるという点に存する。そこで本研究は、大きくは全株式譲渡制限会社と公開会社とに区分をして検討を進めている。昨年度、全株式譲渡制限会社を対象とし、機関関係の問題について考察を行ったのに続き、本年度は、同じく全株式譲渡制限会社を対象に、株式関係の問題を中心として、主に次のような問題について考察した。 株式の種類等に関しては、種類株主総会における取締役・監査役の選解任(会社法108条1項但書・同項9号)、株主の権利に関する事項についての株主ごとの異なる取扱い(同109条2項)、議決権制限株式の発行数(同115条)について、会社法は全株式譲渡制限会社に特に広い定款自治を認めているが、定款自治の範囲が広すぎ、濫用的な利用がされるおそれのあることが明らかとなった。たとえば、種類株主総会における取締役・監査役の選解任の制度において、定款において解任は全体の株主総会で行う旨の定めを設けておかない限りは、ある種類株主総会で選任された取締役に不正行為等がある場合にまで、他の種類の株主は、当該取締役の解任を訴えをもって請求することができない。これは不合理であり、立法的な手当てが必要である。 また、定款による株式の譲渡制限の制度については、会社法の下でもなお定款自治の範囲が明らかでない事項が存在することが明らかとなった。たとえば、譲渡を承認する機関について、文言上は単に「別段の定め」を許容するにとどまっているが(139条1項但書)、会社の意思決定機関でないまったくの第三者に決定させることも許容されるかは明らかでない。会社法が定款自治を認めた理由に照らし、解釈により合理的な限定を設ける必要がある。
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Research Products
(6 results)