2011 Fiscal Year Annual Research Report
相続財産破産制度の優位性に関する実証的研究-相続財産管理制度との比較分析
Project/Area Number |
21530087
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 利一 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (60273869)
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Keywords | 破産 / 相続財産破産 / 相続財産管理人 / 相続財産管理 |
Research Abstract |
本研究は,今次破産法改正において,立法的手当てが行われた相続財産破産につき,その意義の確認と利用促進を目的として,ヒアリング調査を主眼とした実証的分析を行うものである。民事訴訟法学においては,これまで,限定承認等の清算手続に対する相続財産破産制度の優先性とその利用促進が説かれてきた。本実証研究は,そのような学説の意義をあらためて検証し,今後のあるべき相続財産破産制度を考える出発点とするものである。本研究の特色は,とくに,これまであまり注目されてこなかった相続財産管理人による破産的清算スキームを併せて調査することにある。本年度は,倒産実務家に対するヒアリング調査を随時実施することで,現状のスキームについての知見を獲得することを主たる目的とした。これまでの基本的な考え方として,相続財産破産が活用されるインセンティブには,相続財産に対する債権の存否について争いがある場合,簡易な確定方式として,破産手続の活用が考えられること,また,本来,相続財産に取り戻すべき財産が考えられる場合,否認権行使をして,当該財産の取り戻しを考える場合に,破産手続の利用が促されることが指摘できた。これらは,相続財産管理人サイドのインセンティブで破産手続が利用される場合であったが,これらに加え,債権者サイドからも,対象となる財産の確定および適切な管理と,さらに公平な財産の分配を考慮し,破産手続の申立てをなすインセンティブがなくはないことも指摘された。しかしその一方で,相続財産管理制度において,かなりの事例が処理できるという認識があることも否定できないことが明らかとなった。
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