2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530094
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
田頭 章一 上智大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80216803)
|
Keywords | 信託 / 健康被害救済 |
Research Abstract |
本年度は、1年目に調査・研究したアメリカおよびオーストラリアの賠償ファンドの分析の継続とともに、イギリスにおける実例の研究を課題とした。校務日程等との調整のため、イギリスでの調査が、平成23年2月~3月となったが、イギリス議会におけるアスベスト立法の動向の調査、アスベスト企業の代表的な賠償ファンドであるT&N社賠償ファンドの調査など、充実した調査が実施できた。賠償ファンドのあり方も、研究対象国毎に大きな違いがあり、それは不法行為賠償法の基本的考え方のほか、各国の倒産処理法の仕組みが大きく影響していることが明らかになった。また、実務的には賠償の方法およびその額の決定ルールが重要であり、様々な工夫がなされていることを知見として得ることができた。 わが国の展開に関しては、水俣病被害者救済特別措置法に基づく被害者救済および原因企業再建スキームの研究が重要なステップと考え、その特殊性を前提としつつも、この救済スキームから一般的なシステムの形成に向けてどのような視点を得ることができるかについて、論文を作成した(原稿は平成23年1月に提出済み、震災のため、発刊遅れ)。また、倒産処理手続等で、一定の財産を手続の外に出して処理するテクニックとして信託が利用されている実態についても調査を行い、信託制度の多角的利用のあり方についても、検討を加えた。 信託を利用した賠償スキームをわが国で組成する場合の問題点、たとえば、信託契約等の具体的内容、受託者の資格等の規律、法的倒産処理手続との関係、賠償額決定手続の仕組みなどの諸点について、比較法的研究の成果を踏まえて、最終年度に向けて研究を進めた。
|