2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21530094
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
田頭 章一 上智大学, 大学院・法学研究科法曹養成専攻, 教授 (80216803)
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Keywords | 信託 / 健康被害救済 |
Research Abstract |
研究期間最後の年度である本年度は、過去2年度に行った調査と収集資料の分析を行い、また、外国での補充調査として、アメリカでの調査を行った。研究計画では、3年目の外国調査は、必要に応じて行うこととしていたが、アメリカのRand Instituteから、アスベスト賠償トラストの詳細に関する実証研究(Lloyd et.al."Asbestos Bankruptcy Trusts"など)が刊行されたことから、その内容についてインタビューを行うこととした。多数のトラスト間の共通点と相違点、アスベスト被害だけでなくメキシコ湾石油流出事故の賠償ファンドの設立とその問題点など、興味ある知見が得られた。賠償実務でのトラストの活動では、将来請求権者の利益の適切な代表システムを用意するなどの組織構築上の工夫とともに、民間の専門会社(たとえば、届け出られた賠償請求権を審査し、優先順位を決め、実際に支払いを行う"Claims administrator"と呼ばれる会社など)の役割が大きいことがわかった。 前年度の報告で「原稿は平成23年1月に提出済み、震災のため、発刊遅れ」と報告した論文「巨額賠償等債務を負う債務者の事業再生と被害者保護」が今年度初めに発刊され、その内容に関して、各界の専門家と意見の交換を行った。特に3月に発生した東日本大震災に伴う原子力損害の賠償システムの在り方との関係について、文献等による研究のほか関係者との意見交換に努めた。 今年度は事情により夏季の研究時間が制限されたために、成果をまとめる作業が十分できていないが、外国における諸制度の経験に基づいて、わが国でも信託を利用した賠償スキームの有用性を示すための材料は得られたものと考えている。
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Research Products
(1 results)