2011 Fiscal Year Annual Research Report
「従業員の経営参加」としての従業員持株制度と企業の社会的責任
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21530101
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
道野 真弘 近畿大学, 法学部, 教授 (70292084)
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Keywords | 従業員持株制度 / 従業員の経営参加 |
Research Abstract |
本年は、韓国およびドイツの従業員持株制度および従業員の経営参加の状況について、現地に赴いての調査および文献調査を主に行った。韓国では韓国証券金融(株)等でインタビュー取材もすることができた。韓国では従業員持株制度が、国策として推進されている。その理由は韓国企業がいわゆる財閥の支配下にあり、財閥出身者の意向が強く影響する中、その監視監督体制の一環として認識されていることにある。 ドイツでは文献調査が主であったが、ケルン大学とゲッティンゲン大学でわずかの時間ではあったとはいえ一定の成果を上げることができた。ゲッティンゲン大学にて在外研究中の関西大学教授三島徹也氏および岡山大学准教授一原亜貴子氏からドイツにおける社会事情などを聴取することができたのも、法律の基盤となる社会・文化の理解のために有意義であった。ドイツは共同決定法を有する国であり、従業員の経営参加に熱心な印象もあるところであるが、従業員持株制度については、執拗に文献等を調べてみてもやはり多くは期待されておらず、その欠点としてあげられるところが強いものと思われる。また国民気質から、株への投資よりも貯蓄を選ぶ堅実な面があり(この点は我が国も同様であるが)、普及は困難なようである。もっとも、租税法上の裁判例として従業員への株式の付与に対する課税問題が取り上げられてもおり、全くないわけではない。なお、共同決定法についてもその適用を受ける企業はごくわずかに留まるものであり、労働者に多くの経営関与権を与えることに慎重な面は否めない。 ドイツでは労使対立が、韓国でも財閥支配による労使対立が問題視されている中、わが国では基本的に労使協調路線が定着している。むしろ労使協調に偏りすぎている面があるのかもしれないが、だからこそ、労働者が株主として経営に関与し、対等な関係として経営にもの申す関係の構築が必要であると考える。
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