2009 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキタス時代の情報法における基底的価値とエンフォースメントに関する比較制度研究
Project/Area Number |
21530102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 いつ子 The University of Tokyo, 大学院・情報学環, 准教授 (00262139)
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Keywords | 情報法 / インターネット / 表現の自由 / メディア / 通信・放送 / 政策 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究期間の初年度となる本年度の業績として、現地調査等を行ったアメリカにおける関連領域の研究者達からも好評を得た、主に以下の二つの研究成果が挙げられる。 第一に、情報の自由と規制との調整をめぐる具体的な個別課題に関する成果として、インターネットによって牽引されるメディアの多様化とグローバル化の進展に伴い日本において制度の大規模な見直しが検討されているメディア・情報通信法制に注目し、なかでも、規制緩和の是非が問われているマス・メディア集中排除原則ないし所有規制のあり方について、検討を加えた。そして、特にアメリカにおける関連の法令・判例・学説の分析と比較考察によって明らかとなったのは、集中排除原則が実現しようとする「多様性」とは何か、また、それを実現する手段としての具体的な政策を憲法で保障される表現の自由の下でいかに根拠付けるかを明確化するためには、一国毎のローカル・レベルにとどまらずグローバルなレベルにおいて、希求されるべき多様性の実現に向けた国家・市場・メディアの役割について、互いに対立する哲学をぶつかり合わせながら議論を深めていく作業が不可欠となることである(研究発表欄の「国際メディア事業の展開と基本的情報の提供」を参照)。 第二に、本研究の全体的な枠組みに関する成果として、これまで書き溜めてきた情報法関係の論文を、情報の自由・規制・保護という三つのキーワードの下で体系化し構造化して、一つの著書にとりとめる作業を進めた。この作業を通じて、情報法の体系を支える基底的な価値としての情報の自由の規範的意義とその限界について、また、情報に関する法律が実際に運用され執行されるエンフォースメントにおける具体的な利益調整にあたって考慮されるべき原理や手法について、本研究の全体の骨組みとなる基本コンセプトをまとめた(『情報法の構造(仮題)』として東京大学出版会から近刊予定)。
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Research Products
(1 results)