Research Abstract |
1インフォームド・コンセント(IC),2研究者の範囲と倫理審査,3ケノム解析研究における対象者の血縁者の問題を中心に米欧の状況を参照して検討した。1ICに関しては,同意を得る前に説明が求められるが,計画段階で研究の内容や結果の影響・リスクについて具体的に確定できない場合がおる。例えば,(1)研究開始後に計画段階で想定できなかった内容を含める必要が出てくる場合,(2)個人ゲノム解析研究のように計画段階で結果の影響を具体的に予想できない場合,(3)バイオバンクで収集された試料を利用する研究の場合,(4)診療情報及び残余試料を用いる研究の場合,などにおける説明の問題である。基本的には,対象者と接触できる場合には再説明・再同意での対応,接触が難しい場合には,包括同意とその後の継続的な情報開示及び倫理委員会の監督による対応が望ましいと考える。また,(5)死後の追跡について重篤疾患罹患の対象者に対する説明のあり方の問題もある。2研究には,バイオバンクやコホート研究のように,研究を主体的に実施する者と対象者の診療情報を入手・提供する者が異なる場合がある。後者は,遺伝子解析倫理指針及び臨床研究倫理指針では研究者等に含まれるが,疫学研究倫理指針では研究者等に含まれない場合も多い。その相違が問題を引き起す。とくにゲノム解析を含む疫学研究の取扱いが問題になる。3ゲノム解析研究では,得られた配列情報が他の研究者に開示されることが多い。匿名化がなされても,最近では,配列情報の匿名性を破ることも可能になりつつある。さらに,対象者の配列情報血縁者にも共有されるため,対象者の研究参加が血縁者に不利益をもたらす可能性が現実的になりつつある。この問題に対して,IC,倫理委員会などによってどこまで対応可能か,とくに本人の研究協力に対して血縁者にどのような関与を認めるべきか,問題は深刻で,今後研究を進める。
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