Research Abstract |
平成23年度は,(1)医学研究に関わる法律問題として,治験に関わるGCPと,インフォームド・コンセントをめぐって争われた損害賠償請求事件についての検討,(2)米国において人を対象とする研究に適用されるコモン・ルールに関して開始された改訂の動きを跡づける作業,(3)臓器移植法改正について,これまでの経緯を踏まえた検討,(4)内閣府ゲノムコホートプロジェクト,ナショナルセンターのバイオ・バンクの連携,東北メディカル・メガバンク計画などの具体化を踏まえた包括同意の問題の具体的な検討,(5)ゲノム解析を軸に据えるコホート研究のあり方に関する検討,(6)わが国におけるブレインバンクの本格的構築を目指してそのあり方に関わる検討,(7)遺伝医学の推進と遺伝医療の受診促進を目的とする米国遺伝情報差別禁止法の紹介と検討,を行った。そのうち,(2)のコモン・ルール改訂については,(1)通常審査,迅速審査,審査免除の使い分け,(2)多施設共同研究についての倫理審査のあり方,(3)情報についてのリスク管理のあり方,(4)診療由来試料の研究利用に対する包括同意の利用,(5)有害事象データの活用など,わが国と共通する問題が検討されており,有益な示唆が得られる。(4)については,資料の使途を医学研究に限定した上で,試料の全ゲノム配列解析の可否,診療情報に死亡診断書を含めることの可否,資料利用者(アカデミアと企業),資料の帰属,知的財産権の帰属,匿名化,結果開示,保存・廃棄などについての検討と参加者・提供者等に対する説明が重要である。(5)に関しては,(1)研究に関わる人材育成とキャリアパスの構築,(2)追跡における外部データの利用体制の改善,(3)研究計画の変更と終了のあり方,の重要性が指摘される。(7)の遺伝情報差別禁止法に関しては,保険や雇用における問題点とわが国での対応の検討の必要性を指摘した。
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