2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530106
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
手嶋 豊 Kobe University, 法学研究科, 教授 (90197781)
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Keywords | がん / 治療 / ターミナル・ケア / インフォームド・コンセント / 診療契約 / 治験 / 医事法 / 自己決定 |
Research Abstract |
本研究は、がんに罹患した患者をめぐって生じる医事法の諸問題について、(i)がん告知のあり方と告知後の患者のケアのあり方、(ii)がんに対する治療方法開発・治験のあり方、(iii)がんが進行し死が不可避に至った場合のケアのあり方、の3つの柱を立てて、その問題点を法的な観点から分析することを試み、それらの検討結果を統合することを通じて、がんをめぐる法的問題点の全般的解決をめざす3年計画の研究である。 本年度は1年目に該当し、医学・法学に関する国内外の文献収集・検討を行い、わが国及び諸外国におけるこの問題の処理の状況につての情報収集をおこなうと共に、医療機関への聞取り調査を実施して医療の現場での事情について情報を得た。前者では、特にがん患者に特有の問題ではないが、治療法の選択を通じて法的問題となりやすい免責に関する議論状况をまとめる作業(後掲「アメリカにおける「診療契約論」)を通じて、医療における治療法の選択にかかる患者の権利行使と権利放棄のあり方について、検討する機会を得た。その結果、日本の現在の議論状況と異なり、かなり活発な議論が損害賠償法の一般論との関係で論じられている点が指摘でき、比較法の成果として一定の意義があると考えられる。後者に関しては、がん告知が医師の裁量と認められていた時代から、告知が当然になっている今日の状況を比較するための貴重な意見を得ることができた。その結果は他の医療機関への聞取り調査も今後実施してゆく中で生かしつつ、最終的な成果として報告する予定であるが、医療関係者の直面している諸問題に対して、法的問題の議論は端序にすぎず、望ましい制度設計の必要性が痛感された。来年度は、本年度の研究成果をさらに発展させるとともに、治験等の問題についても検討することを通じて、本研究の目的全般の達成をめざす予定であり、そのための基礎的作業として本年度の作業を位置づけることができる。
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