2011 Fiscal Year Annual Research Report
「利益誘導」と政党ネットワーク:地方公共投資の配分と日仏伊戦後一党支配の比較分析
Project/Area Number |
21530113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 洋平 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (90242065)
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Keywords | 比較政治 / フランス / イタリア / 日本 / 政治史 / 保守一党支配 / 利益誘導 / 地方公共投資 |
Research Abstract |
本研究が対象とする日仏伊の三力国は、1980年代まで、中央集権的な中央地方関係と、国家中心の経済運営という政治構造の基本的特徴を共有し、50年代末以降、保守政党が長期一党支配を継続したことでも共通している。いずれの国においても、戦後の保守一党支配を説明する際には、中央政府が地方自治体に配分する公的投資資金の配分が不可欠の要因となってきた。本研究は、中央政府が地方自治体に配分する公的投資資金(補助金や公的金融機関の融資など)の配分(「利益誘導」)が、政権党の党派ネットワーク(地方議員や首長との関係を含む)にどのような影響を与えたか、という観点から、第二次大戦後の日仏伊三力国の比較分析を行なうことを目的とする。 本年度は本研究課題の中核となる2つの工程、(1)各国毎の歴史過程の実証分析、(2)比較分析の枠組の構築のうち、過去2年間に行われた(1)の成果を補足しつつ、(2)の作業を重点的に進めた。(1)のうち、フランスについては、選定されたケース(県単位)について、これまでの実証研究の成果を取り纏め、学部紀要(『国家学会雑誌』)連載論文を完結させた。補足的な史料の収集などを進め、高い水準の実証度を実現した。パリで開かれた預金供託金庫主催の研究集会でも成果の一部を紹介する報告を行ない、報告原稿は近く公刊される予定である。日伊については、地方(県単位)の事例に関するモノグラフの収集・分析を続け、60年代までについては概ね目途が付いた。フランスに関して新たな重要史料が発見されたために、(1)の補完作業に思わぬ時間を要してしまったが、(2)についても、60年代までの三か国を比較する枠組の調整もほぼ整い、現在、邦語・英文で成果を公表する準備を進めている。
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